第14章 【文スト】運命を見つける60秒間【江戸川乱歩】
「ちょっ、なにするのさぁ!」
少し離れた路地まで連れてきたところで、乱歩はジタバタと暴れて敦の拘束を解いた。
「いや、いきなりすぎますって!
一目惚れならこう…友達からとか!徐々に行けばいいものを!」
「だって、分かっちゃったんだもん
俺あの人と結婚して、二年半後には子供は2人出来きてる!双子!」
「いや、妄想にしても怖すぎますって…」
「いやほんとなんだって!戻る!戻って口説いてくるー!」
せっかく引っ張ってきた道を戻ろうとする乱歩をまた腕で羽交い締めに拘束して敦は足を踏ん張る
「ばかなの!?また出直しましょ!?」
「今日じゃないといけないんだって!離してよ」
あまりの力で踏み込むから、さすがの敦でも食い止めきれずによろついた。
「なんで今日じゃないといけないんですか…」
敦は掴んでいた腕を解いて、乱歩と向き合いゆっくりと理性的に問いかけた。
乱歩は閉じたままの瞳で訝しげにふん…と鼻を鳴らすと。
「ゆりなさん、今日が誕生日だから
なのに、このあと予定もないから…
ボクが祝いたい。」
「…乱歩さん」
乱歩さんは変な人だ。確かにそれは否めない
けれど嫌な人じゃない、悪い人じゃない。
唇を尖らせて、「ボクの未来の奥さんが1人で誕生日過ごすなんて可哀想じゃないかぁ」と駄々をこねる。
「じゃあ…まぁ…行ってもいいですけど
断られると思いますよ?」
敦は降参だと両手の平を上げて見せる
そんな敦に乱歩はクククッと肩を鳴らしてびしっ!と人差し指を向けた。
「ボクを誰だと思ってるの?
名探偵だよ…?」
「それは知ってますけど…」
乱歩はバッと両腕を広げてみせる。肩にかかっているケープがその衝撃でフワリと開いた。
「もちろん、わかってるに決まってるじゃないか!
彼女がなんと言えば堕ちるか、どうすれば喜ぶか、全部全部ね」
お見通しだよ、と薄い唇が動いた。