第14章 【文スト】運命を見つける60秒間【江戸川乱歩】
「そっかそっかぁ…」と太宰は項垂れると両頬を両手で覆ったポーズでコテンと首を傾げる。
「もし社長の欲しいもの、ドンピシャで当てたら…社長よろこぶんだろーなー」
ちらりと与謝野を確認しながら太宰は聞こえよがしに独り言を呟く。
そのアイコンタクトをうけとった与謝野も頷くと、「そうよねぇー」と便乗した。
「でも社長のほしいものなんて難解問題、私たちじゃ無理よー」
「やぁ、そんな難問解けるとしたらそれこそ名探偵だよ
社長も褒めてくれるんじゃないかなぁー」
最後の一言を聞いた途端、乱歩の帽子がぴくりと動いた。
「褒めて…くれる?」
「あぁ!褒めてくれるだろうね」
「……」
乱歩は太宰の返答に肩を揺らして笑い、空いてもいない目を輝かせる
「えーそっかぁへへへー褒めてくれるのかー
ま、別に褒めて欲しいわけじゃないけど
ボクしかわかんないだろうしね!
うん、よし、しかたないから名探偵の僕が買ってきてあげよう!」
右手と右足を同時に出しながら乱歩はニヨニヨ笑いながら出口に向かう。
皆「よ!さすが乱歩さん!」なんて音頭をとりながら囃し立てる。
そのなかで、一人苦笑いを浮かべる敦の肩を太宰が掴んだ。
「じゃ、敦くん
付き添いよろしくー♡」
「は!?なんで俺!?」
「だって、乱歩さんひとりじゃ迷子になって帰ってこれないし、僕達忙しいし、敦くん暇そうだし?」
「えええ…嫌ですよ」
「この任務を断るに値する予定があるっていうなら聞くけど?」
そう言われても、確かに敦にはまっとうな理由などなく…あるとすれば、「面倒臭いから」ということだけで…。
「わかりましたよ、ついていくだけですからね?!」と念を押して、とっくに探偵社を出ていってしまった乱歩を追いかけた。