第14章 【文スト】運命を見つける60秒間【江戸川乱歩】
「ここの道が、左!」
「はぁ…」
敦は3歩も4歩も先を歩く、乱歩のあとを追いかける。
嬉嬉として眼鏡をかけたまま歩く乱歩は、グルン!と踵を返して敦を睨んだ。
「もう!敦くん遅い!」
「乱歩さんが早いんですよォ!」
この奇妙な組み合わせが横浜の街を歩いているのには理由が1つ2つ…3つ4つあるといったところで…
事の始まりは太宰のあの一言からだったのだが…
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「社長の誕生日が近いらしい…」
「へぇ」
特に我関せずと、新聞を眺めながら答える敦とは違い
周りの探偵社員は爛々と目を輝かせた。
「どうやってその情報を?」
国木田までもが興味を示したことに、敦はやっと目を持ち上げ、ドヤ顔をきめる太宰に耳を貸した。
「ルートは教えられないけれど、確かなツテからだよ」
「お前にしてはお手柄だな」と国木田が何やら手帳に書き込み始める。
「で、サプライズパーティだけど…」などと
話はテキパキと決まって言ったのだが、肝心の「プレゼントは何を買うか」というところで、皆口を噤んでしまった。
「正直…社長の欲しいものなんて分からないわよね…」
「お金で買えるもので欲しいものがあるとも思えないですし」
ううん…と唸っていると、ちょうどそこに駄菓子を両手で抱えきれないほどの袋に入れて運ぶ乱歩が室内に入ってきた。
「ちょうど良かった!ねえ、乱歩さん」
「ん?」
目を瞑ったままの乱歩に皆両手を握って縋る。
「「お願い!社長の誕生日プレゼント、選んできて!!!」」
「えぇー」
「ほら、乱歩さんの【超推理】をもってすれば
社長のほしいものなんてお茶の子さいさいのさいじゃないですか!?」
「まぁ、そうだけどぉ」
褒められて、ふふん!と胸をはる乱歩
「でも、ムリ!
僕の超推理は難問を解くためにあーるーの!」
プンと顔をそらして、机に腰掛けたまま足をぶらぶらと振る。
片手で駄菓子を漁りながら、呑気に鼻歌なんて歌って。