第13章 【キスミーベイビー】ギブミーベイビー【番外編】
「…初めてあいつに会った時
ビビりながら「ちゃんと消毒しないとダメだ」とかなんとか、説教たれてきたんだよ
そん時だ」
ガトーショコラをオーブンから取り出しながら、爆豪は答える。
いつもなら、ウルセェと噛み付くところを答えたのは、相手の轟もまた、ゆりなを好きな男だからだろう。
「一目惚れか、俺も同じだ。」
空いたオーブンに、クッキーを入れて時間と温度を入れる。
轟は、そのままオレンジ色のオーブンの前に立って中を凝視した。
「お前にゆりなは渡さねぇ……絶対に」
「……それも、同じだ」
睨み合う二人の間にピリピリとした空気が流れる
そこに、
「ん?なんか甘い匂いしねぇ??」
そんな空気をぶち壊すような軽い声が突然聞こえて、二人は声の方に向く
上鳴と瀬呂が外から帰ってきたところで、香りに釣られるようにキッチンスペースに入ってきた
「うわ!才能マン2人が菓子作ってんの?やべーうまそー」
「そっか、明日ホワイトデーか」
「作るとかスゲーよ、俺は買って渡す予定だもん」
返す相手居んのかよと瀬呂が笑うと「彼女!」と上鳴は怒りながら言う。
「でもやっぱ手作り喜んでもらえそうだよなー
な、爆豪俺に作り方教えてくれよ!」
上鳴が両手をパン!と合わせて頼むと爆豪は、「あ?んで俺が、嫌に決まってんだろうが」と吐き捨てる。
上鳴もハナから断られるとわかっていた様子で「だよなー」と返すと
軽く手を振って自室に戻って行った。
「爆豪、お前なんでさっき俺には教えてくれたんだ?」
「あ?」
2人が消えたあと、冷めたガトーショコラにオランジェットを飾り付ける爆豪に轟が問いかけた。