第13章 【キスミーベイビー】ギブミーベイビー【番外編】
レシピの見方を懇切丁寧に怒鳴りながら教えると、
「そうか、卵いらねぇのか」と理解した様子だったのだが
ううん、と悩んだ後
「…小麦粉、ねぇから蕎麦粉でいいか…」と呟く。
「………ちょっと待て」
グラムも計らずに注いでいく蕎麦粉に牛乳を注ぎ、机の上になぜか、さっきまでなかったはずの麺つゆが置かれている。
「クソか、ゆりなを殺す気か」
「あ…」
爆豪は轟からボウルを奪うと、黒魔術じみた内容物に顔を顰めシンクに捨てる
「小麦粉!やるから使え!」
「いいのか?」
「いいから言ってんだろうが
んな変なもんゆりなに食わせられねぇだろ!」
いつの間にか向かい合っていた2人が横に並び、轟は爆豪の指示の通りに作り進めていく。
轟だって、もともと手先は器用な方だ
赤と白のボックスクッキーがワックスペーパーに並ぶと、爆豪もいよいよ自分の作業の終盤にかかる。
「爆豪は何作ってんだ?」
「カンケーねぇだろ」
オーブンを閉めると、入れ替わるように作業台の上に輪切りのオレンジコンフィーが並ぶ。
テンパリングしたチョコレートに半分ずつ浸すと、ワックスペーパーに並べていった。
「器用だな」
「うっせー見てんじゃねぇ」
見るなと言いながら、とくに止めるそぶりも見せず作業を続ける爆豪……出来上がったオランジェットは窓から差し込む光にキラキラと輝く。
「なぁ、一ついいか?」
「…話しかけんじゃねぇっていってんだろ」
「爆豪はいつからゆりなが好きなんだ?」
轟の問いに、爆豪はやっと目を上げる。
焼きあがったオーブンのベル音がチンと軽く鳴った。