第11章 ポイントカードはお持ちですか?【モブリット】
それなのに、モブリットさんはもうそれはそれは優しく笑ってくれて
「…よかった
じゃあ、えっと…お仕事終わられたら迎えに行っていいですか?」
『そんな、私がお店まで行きますよ』
そこまでのお手間かけさせられない、と手を振ると
「好きな人に夜道を一人で歩いて欲しくないんです、心配だから」
『へ?!』
「……あ!」
モブリットさんの顔はみるみる紅がさして
いや、きっと私もなんだろうけれど
「勢い余って…言っちゃいました…すみません…気持ち悪いですよね」
顔を半分手で隠しながら項垂れるモブリットさんに、私も熱を移されたのだろうか
『気持ち悪くなんかないです!
私も、モブリットさんのこと…好き…ですから』
私が両手で顔を覆って隠しながらそう言うと
右手を掴まれて、せっかく隠した顔を見られてしまう
『や…見ないでください』
「嫌です、見せてください…」
視線が絡み合って、本当に恥ずかしくてたまらない。
けれど、先に限界が来たのはモブリットさんの方で
「あーーー、もう…可愛すぎる…」といって抱きしめてきた。
突然、長い間焦がれてきた厚い胸板に抱かれ、私の脳みそは完全にショートしてしまう。
その時、ガン!と音がして、モブリットさんが「いて!」と声を漏らした
腕の隙間から後ろを見ると、いつも厨房で不機嫌そうな顔をしている小柄なシェフが、お玉を片手にこちらを睨んでいる