第11章 ポイントカードはお持ちですか?【モブリット】
『も、モブリット…さん!?』
振り返った途端に、
走ってきたのか、肩で息をする彼の名前を思わず口にしてしまい、しまった!と思う
名前を知ってるなんて気持ち悪いと思われたに違いない
「俺の…名前…知っててくれたんですか」
そんな私の心配をよそに、モブリットさんは何故か嬉しそうに笑う
『えっと…私忘れ物しましたか…?』
問いには答えず、恥ずかしさで目を逸らしながら言うと
モブリットさんは、いいえ、と首を振った
「僕が、忘れ物…をしたというか」
『え?』
「あの…よかったら、今日
お仕事帰りお暇じゃないですか…?
誕生日の方を当日お誘いするなんて、無礼だと思うんですけれど…」
もちろん暇だ、さっきのさっきまで自分が誕生日だなんて忘れてたんだから。
『えっと…』
ただ、頭の中はパニックで
なんで誘ってくれてるのかも分からなくて、口がうまく動かせない。
「迷惑…ですよね
たかが店員に…こんな」
『そんな!嬉しいです…!
今日、予定空いてます、全然暇です』
少し食い気味に言ってしまって恥ずかしくなる
これではこちらの気持ちはバレバレじゃないだろうか。