第11章 ポイントカードはお持ちですか?【モブリット】
そこまで考えたところで
「あの、ちょっと待っててもらえますか?」
とモブリットさんが一言言って、キッチン奥に下がってしまう。
少し待ったあと、奥から現れた彼の手には綺麗に包装されたクッキーの袋が握ってあって
それを私に差し出してくれた。
『……えっと』
「あの、こんなものですが…よかったら
受け取ってもらえませんか?
ラベンダーティーの茶葉が入ったクッキーなんですけれど」
巨体に似合わず、顔を赤らめる姿は青年らしくて、こっちまで赤くなってしまう
『あ、ありがとう…ございます』
少なからず、イイなと思っていた人にこんな事をされては胸は高鳴るばかりで…
カードとお釣りを受け取り、どこか名残惜しい気持ちを振り払って店を後にした。
会社までの道を歩きながら、肺に溜まった息を一気に吐き出す
『はぁぁあああ…なんだろうコレ…』
舞い上がってしまってる
相手は常連さんにサービス、程度だろうに…
手元のクッキーを見るだけで
顔がにやけてしまいそうになる。
今日のモブリットさんも、かっこよかったな…
ぼんやりと思い出しながら歩みを進めていると
「あの!」と声をかけられたと同時に、誰かに肩をつかまれて心臓が跳ねた