第10章 【現パロシリーズ】orange【相澤消太】
言い捨てて車に戻ろうとするゆりなを今度は相澤が引き止めた。
「おい、スゴイことを言い逃げるな」
『…逃げさせてくださいよ、恥ずかしいんで』
掴まれていない片手で顔を隠すゆりなに
どうしようもなく愛しさがこみ上げてくる。
「四月…」
『…?』
「四月まで、2人で待っていてくれ」
『ちょっと、何言ってるかわかんないです』
「大学時代の先輩が、新しくエスカレーター式の学校法人を設立した。そこに引き抜きされている。
静岡だ。
先に行って哉太と待っててくれ」
「結婚しよう」
『え、無理ですって』
「キスは良いのに結婚は無理なのか」
『それとこれとは…』
「俺じゃ嫌か」
『…酷な聞き方をしますね』
2人の視線が絡んで、離れて、また絡まった。
「哉太には許可を得てる
父親になって良いと言われた」
ゆりなはパッと哉太を見つめる、哉太はゆりなの視線を感じて顔を上げるとタイミングよくピースサインをして見せた。
『…いつの間に』
戸惑うゆりなの手をそっと握ると、相澤は一歩身を寄せてゆりなに並び立つ。
「嫌なら、突き放してくれ
嫌じゃないなら、言葉にしなくてもいい…
うなづいてくれ」
『………』
ゆりなは少し考えた後に、ゆっくりと首を縦に振った。
どうかしているのは分かっている。
まだ会って2回目の2人が、結婚を約束して上手くいくかの保証なんてない。
冷静じゃない。
それでも、いい
結婚の成功や失敗なんて、別れる間際までわからない。
昔友人が言っていた…
ーーー私たち、周りから絶対離婚しなさそうないい夫婦って言われるけれど
結婚に絶対なんてないのよ
死ぬ間際に、来世も旦那と一緒になりたいなって
思たらその時初めて成功っておもえるかなって思ってるわ。
そう言っていた彼女と彼女の旦那は今でも恋人同士のように仲がいい。
絶対を信じている人たちの方が、案外愚痴を垂れていたり、後悔していたりするものだ。