第10章 【現パロシリーズ】orange【相澤消太】
『殴られた後、スマホを奪われてデータを消されましたけど…
でも、私もそこまで馬鹿じゃないんで…もちろんデータを隠して取ってます…。
印刷して、離婚届と置いておけば離婚してもらえると思うんです…
でも怖いですから、一旦県外に逃げようかなって…』
しっかりと話す彼女は、決して守られるだけの女ではなかった。
少し自惚れていたのだと相澤は思う。
自分が救えたらと思っていたが、彼女は充分に1人で強い。
『哉太…相澤先生のことを慕っていますし
学校も大好きだって言ってますから…引っ越しは可哀想ですけど…』
音声の聞こえない車内から哉太がゆりなに手を振って見せる。
「身寄りは?」
『私の両親は他界してますし、一人っ子なので…
でも、保育士の資格がありますから就職には困らないですよ』
ここにきて自信を取り戻したように笑う彼女は眩しくて…
抱きしめたくなった両手をどうにか抑える。
「なら、早く警察に行って帰るか」
車に戻ろうとする相澤の腕を、ゆりなは掴んで首を横に振った。
『哉太の父親を犯罪者にしたくないんです…
彼女とは同意みたいですし…
だから、警察はいいです』
「なら、俺のことだけでも言いに行け」
『先生をなんで警察に?』
ゆりなは『ん?』と首をかしげる。
その仕草は哉太がよくする仕草で、親子だなとまた変に納得した。
「さっき、無理やりキスしただろ」
そう言われて思い出したのか、ゆりなはカッと頬を染めた。
『…いや、それは……
いいですから、もう帰りましょう』
「良くねぇだろ、立派に強制わいせつ罪だぞ」
『良いんですって…もうそれは
嫌じゃなかったですから』