第10章 【現パロシリーズ】orange【相澤消太】
「ホント!?」と顔を明るくさせる哉太。
と同時に後部座席のドアが空いて、ゆりなが不思議そうな顔で前に座る哉太を見つめた
『哉太、どうして前に?』
「相澤せんせーと話してたの!」
哉太はまた座席の間をするりと抜けて後部座席に戻ると、ゆりなに抱きついた。
手に握られた用紙に相澤が気づくと、ゆりなは『あぁ』と自称気味に笑いそっと開いて見せる。
『離婚届…もらってきました』
「…それは」
『主人…今まで見えるところを殴ったり噛んだりしてくることはなかったんです。
哉太の前でも、殴らないようにしてくれてたんですけど…』
「でも僕知ってたよ?」
『そうなんですよね…結局隠せてると思ってたのは大人だけで、子供は全部見てた…知ってたんです…
知ってた上で笑っていてくれたんです…
その哉太の強さに私は…甘え続けてました』
ゆりなは哉太を抱き寄せると頭を撫でる。
『子供には父親が必要だって思い込んでたんです…ずっと
でも、違いますよね
こんなに哉太を苦しめる父親ならいない方がマシです』
「苦しんでんのは…2人だろ」
相澤にピシャリと言われて、ゆりなは『そう…ですかね』と答えた。
ゆりなは少し待っていてねと哉太に言うと、ドアを開けて外に出た。
相澤も付いて車を降りると、その側でゆりなと向き合う。
『あの人、援助交際してるんです…というより、女子高校生とお付き合いしてるみたいで…
女の子からメールが届いたんです…写真付きで
その事を聞いたら、殴られました。』
この話をするために車から降りたのだと相澤は理解した。
確かに用語はわからなくても、子供に聞かせる話ではない。
哉太は、初めて乗る車の中でキョロキョロと車内を見て楽しんでいる。