第10章 【現パロシリーズ】orange【相澤消太】
止まる車から、ゆりなはそろそろと降りると
哉太に「少しまっていてね」とだけ声をかけて小走りで役所の中に入った。
ゆりなの姿が見えなくなったことを確認して
哉太は、ひょいと後ろ座席から、前の助手席に移ってくる。
「どうした、哉太」
相澤が聞くと、哉太はうーん、と少し笑って
「僕ね、こないだ相澤先生がお父さんだったらいいなって
お母さんに言ったんだ」
と話し始める。
足をぶらぶらしているのは、恥ずかしいからなのか
わからないが、その行為は子供らしくて愛らしい。
「そしたらね
お母さんも、そうねって言ったんだ
相澤先生みたいなお父さんだったら、よかったねって言ってたんだ」
「……」
「だけどね、僕がね
相澤先生に頼んであげるって言ったらダメって」
「相澤先生には、もっと素敵な人ができるし
きっと素敵な人がいるからダメなのよって」
そんな人は居ないよと、すぐに返事をしてやりたかったが
哉太に言ったところで困らせるだけだと飲み込む。
じんわりと温かさを帯びて行く胸の中
子供の戯言に付き合ったに過ぎないとしても
好意を寄せる女性の言葉とあれば、期待して聞いてしまう。
「だからね、もし先生がいいならね
僕のお父さんになってほしい…
先生ならお母さんのことイジメないし、やさしいし
かっこいいもん」
哉太の頭を大きく撫でると、哉太は嬉しそうに目を細めた。
「そうだね、
俺も、哉太のお父さんになりたいよ」