第10章 【現パロシリーズ】orange【相澤消太】
チャイムを鳴らすインターフォンのボタンが、やけに重く感じる。
«はい…»
とか細い声がして、久しぶりに聞いた彼女の声にほんの少しだけ胸が熱を取り戻した。
「相澤だ。開けてくれ」
機械越しだというのに、相手に緊張が走るのが分かる。
少し戸惑った後、«はい…»と短い返事がして
だんだんとドア越しの足音が大きくなった。
ガチャり…と開いたドア。
出てきたゆりなは
俯いていて顔がよく見えないが、決して幸せそうではなく…
相澤は骨ばった指の長い手で、ゆりなの頬に触れ
そのままゆっくりと髪をかきあげた。
「………っ」
見るだけで痛ましいほどの大きな痣。
鬱血して、青なのか紫なのか赤いのかわからない色に変色している。
「……せんせぇ」
哉太が泣きながら相澤の足に縋った
「お願い、お父さんにお母さんをイジメないでっていって
お母さん、…痛そうで、可哀想なんだもん…」
哉太の悲痛な叫びを聞いて、ゆりなもボロボロと涙をこぼした。
『すみません…
私が、いけないんです……私がこんなんだから
哉太が……』
「違うだろ、悪いのは全部旦那だ
どうしてこうなった
どうしてこんなになるまで、俺になにも言わなかった」
ゆりなは涙に濡れたままの瞳を持ち上げ、相澤を見つめた
その瞳は、
だって…巻き込みたくないから
と語りかけてくる。
その他人行儀な優しさが
相澤には酷く応えて、怒りや、嫉妬や、愛しさ
色々な感情が混ざり合って唸りを上げて喉奥に差し迫っていった。
ーーーーなんでこいつは、こんなに痛ましくても
こんなに綺麗なんだ。
気づいた時には、髪をかきあげていた手は彼女の頭を優しく撫でていて
そのまま、そっと
ただ触れるだけのキスをしていた