第8章 【現パロシリーズ】にじり口【轟焦凍】
予測するのに簡単すぎる結末に
瞳を閉じて見ないフリを決め込んだ。
私は握られた両二の腕の痛みに小さく息を漏らす。
けれどその息も、轟先生の口内に飲み込まれてしまった。
『…っ』
唇を押さえつけていた、先生の口元が、首筋を這う。
横に視線をずらせば、机に伏して寝息を立てる旦那。いつもの通り立派なイビキが熟睡度をお知らせしてくれている。
『やめ…』
「なんでだ…?」
鎖骨をなぞる唇が動いて、瞳がツイと持ち上がってこちらを熟した視線で見つめてきた。
なんだ悪びれる様子のない彼の態度に、おかしいのは私の方なのかと錯覚してしまう。
『なんで、私なんですか…』
思えばこれが一番聞きたかったことなのかもしれない。
絞り出した言葉に、轟先生は体を起こして私を見つめる。
『私は…結婚してるんですよ…?』
「だからどうした」
『へ?』
「…アイツのこと、愛してんのか?」
轟先生は、私の手を持ち上げて、さっき火傷をしたところに口付けをおとす
『もち…ろん、愛してます』
睨みつけるようにその美しい所作を見ると、轟先生は、火傷の跡をもっと焦がすように熱い息を吹きかけた。
「でも、アイツはゆりなのことを愛してるようには思えねぇ」
『…そんな!』
思わずあげた大きな声にハッとして、旦那の方を見つめるが、相変わらずイビキを鳴らして眠っている。
先生の唇が、耳たぶを擽った。
「もし、アイツがゆりなの事を本当に愛してるって自信があんなら
アイツは俺とゆりながシタ事知ってんだろ?」
その言葉に心臓は他人のように勝手にドクドク音を立てはじめる。
「お前の旦那が、俺のところに怒鳴り込んでこなかった時点で…解ってた」
耳に流し込まれる甘い吐息混じりの声が心を蝕んでいく。
「俺より、お前を愛せる男は居ねぇ…
俺だけだ…」
『ゃ…め…』
脳も体も痺れて、舌も回らない。
その舌さえ、もう絡め取られて、彼のものになってしまって居るのだけれども