第8章 【現パロシリーズ】にじり口【轟焦凍】
ランチだけの約束だった私たちは、その店の前で別れた。
さっきからズキズキ痛い左胸を抑える。
何度が深呼吸をして、やっと踏み出せた足は、幸せの象徴として買ったばかりの家へと向かった。
別に帰りたいわけじゃないけれど、他に行く宛も帰る宛もない。
私の居場所はあそこしかない。
家のすぐ側にあるスーパーによって、大していりもしない食材をカゴに押し込む。
この寄り道が攻めてもの抵抗なのかもしれない。
土日は嫌いだ。
なにかしないといけない気持ちになる。
私の毎日は、ただ当てもなく意味もなくすぎて、曜日感覚だって、その日の旦那のお弁当の有無でどうにか保っているようなもの。
インスタグラムの投稿は、毎週末争うかのようにイベント事をひけらかして、
SNSを初めて以来ほとんど何も投稿してない私は、周りからはどう見られているのだろうか。
ただのつまらない主婦
取るに足らない目立たない女
その通りなのだからしかたない、背伸びなんてしようと思わない。
ただ、毎日コピー&ペーストの繰り返しのような日々を過ごしていきたい。
些細な抵抗は1時間で幕を閉じて、玄関の扉を開ける。
奥の部屋からテレビの音が聞こえてくる、
もう4時だというのに、1日中家に一人でいたのだろうか?
どこかに出かけてくれればいいのに…
言えるはずのない言葉を、ため息に変えてリビングの扉を抜けると「おかえり」と笑顔で振り向いてくれる旦那。
そして「お邪魔してます」
と笑顔を向ける。
轟先生。