第8章 【現パロシリーズ】にじり口【轟焦凍】
『嫌です…っや…めて…先生…』
轟は雨に紛れる声を聞かぬふりをして、崩された襟元の鎖骨に舌をゆっくりと這わせる。
たくし上げられた裾から伸びる太腿は艶かしく、絹どうふのようにきめ細やかで滑らかだ。
指の先が着物越しの胸を掴む。
柔らかい。
「下着…付けてねぇのか」
『っ…だって…着物、です…もん』
「そういうもんなのか」
精一杯だというように睨んでくるゆりなの唇は、さっき口付けたせいで大きくはみ出た口紅に汚れていた。
グニグニと指を動かせば、確かに形を主張してくる突起が掌に触れる。
「…すげぇ、硬くなってる…」
『ふ……っん』
硬くなったところを親指で押すと、ゆりなのまつげがフルリと揺れた。
初めて反応が返って来たことに嬉しくなった轟は、再度ゆりなに唇を重ねてさらに奥へと指を進める。
「…ゆりな」
うわ言のように名前を呼ばれて、ゆりなはゆっくりと視線を持ち上げた。
『なん…で、こんな事…するんですか』
その瞳は一切の暖かさはなく、ただ死にかけの魚のように無気力だ。
「…なんでって、わかんねぇのか?」
こんな状況下で、身体を弄っていた指がふいに止まる
『…分かるわけないじゃないですか…こんな…』
轟は少し悩んだように、口元に手をやって俯いた。
こんな事をしてるっていうのに、子供のような仕草をする。
アンバランスだ
何もかもが。
先生がスニーカーを脱いだら足袋なのも。
エンジンが付いてない寒いはずの車内が熱いのも。
既婚者のアラサー女を、独身の若い男が躍起になって抱こうとしてくるのも。
何もかもアンバランスだ。