第10章 一以貫之【イツイカンシ】
そして時は流れて…………
は一人の赤児を産んだ。
産まれてきたその若君は、不思議な事に………
漆黒の髪と……
琥珀色の瞳を持っていたのだ。
その若君の容貌について信長様も俺も、特に何一つ言及はせず唯々その誕生を喜んだ。
勿論、政宗や家康、三成も手放しで喜び祝った事は言う迄も無い。
秀吉に至っては、信長様の世継ぎが出来た事に歓喜し涙さえ流す始末だった。
はと言えば、その御子を腹に宿した頃から幼女の様な言動はぴたりと形を潜め、年相応の女に戻っていた。
そして今では母としての貫禄在る顔を見せ始め、俺達武将一同が一目置いて仕舞う程になっている。
その証拠に、既に「」と呼び捨てる者は居らず、全員がの事を「奥方様」と呼んだ。
に対しての態度を一貫として変えないのは信長様唯一人であった。
今でも抑え切れないと許りにを愛し尽くし、産まれた子をこれでもかと慈しんだ。
そしてその頃にはもう信長様の大望であった天下統一、全ての民草が安寧平和に暮らせる世の中が手の届く所まで辿り着いていたのだ。