第2章 法界悋気【ホッカイリンキ】
数日後、俺は信長様に呼ばれてまた天主へ向かう。
普段より己自身の采配で動く事を許されている俺が呼び付けられるなど、何か善からぬ事態でも起こったのかと考えながら天主へ辿り着くと、その入口の襖は不自然に僅かな隙間が開いていた。
そう、まるで中を覗き見ろと言わんばかりに。
「……あ゛…」
その隙間から漏れ出す聞いた事の無い声に、俺の身体はびくりと固まった。
この声は…もしや……
そして俺は己の気配を消して、当然の様に天主の中を窺い見る。
「どうだ……?
気持ち良いか?」
其処には……
立ったままを壁際に追い詰め、その背後から腰を打ち付ける信長様の姿。
信長様の大きく武骨な手がの細い両手首を壁に縫い付け、愛らしい小花柄の小袖は腰まで捲り上げられて下半身が丸出しだ。
其所に後ろから着衣のままで信長様の立派な一物が厭らしい音を発ててゆったりと抜き差しされている。
だが俺はその何よりも淫靡な部分ではなく、信長様に突かれる度にかくかくと震えるの脚から目が離せない。
流石『三ツ者』であっただけはある。
の脚には腿にも臑にも鍛えられた靭やかな筋肉が付いていた。
そして女独特の柔らかそうな丸みも備えている白くて美しい脚だった。
そんな美しい脚に散らされている無惨な無数の疵痕。
善くもあの美しい脚にこんな惨い事を……。
へ拷問を行った顔も知らない輩達に否応無く殺意が涌く。
俺がそんなどす黒い感情に支配されている間も、信長様との睦み合いは濃厚さを増して行った。