第5章 千慮一失【センリョイッシツ】
仕舞った………聞かれてしまったか?
「……違うのだ。
これは………」
俺が声を掛けると同時に、は踵を返し駆け出した。
「待て、!」
「様!」
俺と三成が慌てて呼び止めてもは止まる事無く廊下の角を曲がり、その姿は直ぐに消えてしまう。
「は俺が追う。
お前はもう行け。」
「分かりました。
光秀様、様をお願いします!」
三成の返事を聞き終わらない内に、俺もを追って駆け出した。
「……何処に居るのだ。」
自室にの姿は無かった。
中庭に書庫、厨……が姿を隠しそうな場所は全て廻ったが………
「…………彼処か。」
俺は肝心の場所を忘れていた事に気付き急いで其処へ向かう。
襖を勢い良く開け放ち
「っ!」
その名を呼んだ俺の目に飛び込んで来たのは………
天主の張り出しから身体半分を乗り出しているの姿だった。