第5章 千慮一失【センリョイッシツ】
それからも俺は毎晩の様に天主を覗いた。
己のそんな行動を熟々浅ましいと思いながらも、どうしても夜半には天主へ足を向けて仕舞う。
信長様とは見ているだけの俺の身体が変化を起こす程に激しく睦み合う日もあれば、只お互いを抱き締め合って眠るだけの日もあった。
どちらにせよ信長様は常にをこれでもかと大切に慈しみ、も信長様という存在が無ければ生きて行けないのだろうと思わされるに充分な姿を見せ付けられる。
それでもまだ、俺の中にはを欲しいと望む想いが溶岩の如く沸々と燻り続けていた。
正に無明の闇。
何処からも光が差し込む事は無く、真っ暗闇の中を手探りで只管に進む日々を過ごしていたそんな時………
その出来事は唐突に起こった。