第1章 妄想之縄【モウゾウーノーナワ】
「おっと……」
天主へ向かう為、長い廊下を歩いていると曲がり角から飛び出して来たと出会い頭にぶつかった。
その小さな身体を俺の胸に抱き留め支えてやると、は俺の顔を見上げ可愛らしく含羞む。
「また燥いでいるのか、。
秀吉に叱られて仕舞うぞ。」
そう揶揄ってやった矢先、
「こらっ……、待て!」
秀吉の慌てた声が追って来た。
「そら、小五月蠅い秀吉の登場だ。
さあ…小言が始まる前に逃げろ。」
俺が小さく喉を鳴らしながらの背中を軽く押してやれば、は満面の笑みを浮かべて再び駆け出す。
そして不意に立ち止まり振り向くと、その後ろ姿を見つめていた俺に向かってぶんぶんと手を振った。
俺に礼を言っているつもりなのか……
「全く……未通女い奴だ。」
失笑しつつ独り言ちた俺の横を
「待ちなさい、!
廊下は走るなと何度言ったら……」
叫ぶ秀吉が早足で通り過ぎて行くのも、最近では此処安土城内の日常に成りつつある。