第3章 暗箭傷人【アンセンショウジン】
軍義が終わり一番に広間を出た俺は、廊下の片隅で座り込んで居るを見付ける。
信長様を待っているのか……は三成に借りたであろう御伽草紙を読み耽っていた。
「ああ、。
丁度良い所で会った。
俺の部屋に美味い饅頭があるのだ。
喰うか?」
そう声を掛けてやるとは嬉しそうに微笑んでこくんと頷く。
甘い菓子で簡単に釣られるなど、本当に幼女であるとしか思えんな。
「そうか。
では俺の部屋に……おいで。」
俺も如何にも優し気な笑みを浮かべ右手を差し出せば、はその場に御伽草紙を放り出し俺の手を取ってあっさりと着いて来た。
「さあ、好きなだけ喰え。」
饅頭の入った重箱をの目の前に置いてやり、俺は茶を淹れる。
そうしている間にもはもぐもぐと美味そうに饅頭を頬張った。
「くくっ……
、慌てなくても良いぞ。
ほら……此所に餡が付いているじゃないか。」
俺の手がの顎を掬い取り、そしてその愛らしい唇の端にねっとりと舌を這わせてやる。
さあ、どんな反応を見せてくれるのか……
俺がじっと見つめているとは嫌がる素振りもせず、照れ臭そうに頬を染めにっこりと笑う。
その余りに無垢な笑顔を目にした時、俺の背筋をぞわぞわと何とも形容し難い奇妙な感覚が駆け上がった。