第2章 法界悋気【ホッカイリンキ】
どれくらいの時間、悋気や欲望と戦っていたのだろうか……
漸く身体も心も落ち着きを取り戻して、俺は考えてみる。
何故、信長様は俺を呼んだ?
何故、俺が来る事を分かっていてを抱いた?
何故、天主の襖は開いていたんだ?
考えれば考える程………答えは一つだ。
あの時、信長様に釘を刺されたと感じたのは間違いでは無かった。
信長様は明白に俺を牽制している。
「くくっ……」
顔を伏せ一つ喉を鳴らす。
そして直ぐに部屋を出ると、俺は真っ直ぐに自分の御殿へ足を向けた。
もう天主に赴く必要は無いだろう。
信長様が為たかった事は完璧に遂行されたのだから。
真っ直ぐ前を見据えて歩き、城門を出た所で政宗と擦れ違う。
政宗は俺の顔を見遣り声を掛けて来た。
「どうしたんだ、光秀?」
「……何がだ?」
「いや、お前……
何か酷く悪い顔をして……笑ってるぞ。」