第16章 御都合主義の個性さん2
「ど、どうも…上鳴電気っス」
上鳴はまだショックを受けているようで
元気なく自己紹介をする
『あ、どうも…』
咲良も同じくショックな様子で
おずおずと頭を下げた
『ね…相澤先輩…12年後ってさ、未成年と付き合っていい法律になったんですか?』
「いや、憲法は特に改正してないが」
『じゃあ私犯罪者なんだ…』
半分泣きそうになりながら言う咲良
すると、上鳴が突然咲良の手を掴んで
「違う、俺と咲良は本気で結婚する気なんだ
親にも挨拶してくれたし、了解得てる…
人に後ろめてぇ事なんてしてねぇよ?
本気で愛し合ってたら未成年でも付き合えるし、18になったらスグ籍入れるから…咲良は犯罪者なんかじゃねぇ」
――と言い切り
恥ずかしくなったのか、踵を返してキッチンの方に隠れてしまった
「…だそうだ、良かったな」
正直驚いた
あのいつもおチャラけた雰囲気で場を和ませる
ムードメーカーの上鳴が
あんな真剣な顔をするのを見たのは初めてだったから
咲良は赤面して「うん…」と頷いた
「じゃあ俺は帰るから
後は任せた」
キッチンで真っ赤になった顔を隠す上鳴に声をかける
「あ…はい…」
上鳴に見送られ、玄関を閉める
さっきの宣言で毒気を抜かれた
あの二人がどう出会って、どうなってここまでの関係になったのか
俺にはわからない
想像もできない
けれど、2人は確かに愛し合って、
きっと数多くの事に悩んで、乗り越えて
その上で一緒にいる
最近の上鳴の成長の理由はそこにあるのだと感じるほどに
守るべきものが出来て、彼は強くろうとしている
そんな2人の間に入ることなど出来はしない
俺は静かに息を吐いて、車を走らせた