第16章 御都合主義の個性さん2
〜相澤said〜
本当はボールペンを見た瞬間に確信した
「これは上鳴電気のだよな」
そう問いかけた時、咲良の瞳が大きく開く
しばしの沈黙がもう既にイエスと言っていたが
『ち、ちがいますよ』
と咲良は答えた
その答えの違和感に、カマをかけてみる
すると、咲良はまんまとカマに引っかかり、上鳴と知り合いだと俺に確信させてしまった
「上鳴電気との関係を教えてもらおうか」
と近づくと、突然走って逃げられる
後ろから追うと、咲良が女生徒にぶつかって倒れるのが見えた
「おい!大丈夫か」
近づいて、女生徒の上に倒れ込む咲良を起き上がらせる
やけに軽いし…こいつここまで細かったか?
ぶつかられた女生徒は「わ…やっちゃった…」とあせって呟いた
「あ、イレイザーヘッド…
すみません…今この人と唇ぶつかっちゃって…
私の個性発動しました…」
女生徒が申し訳なさそうに俺に言う
恐る恐る咲良を見ると
えらく若返った咲良が俺の腕の中にいた
「…………念の為に聞くがお前の個性って……」
「タイムループです…キスした相手の時間を一回り…つまり12年分若返らせれます、その人の記憶も、体格も全部」
「わかった、こちらで対処する
ちなみに、発動時間は…?」
「短くて三日、長くて一週間です」
女生徒はすみません、と頭を下げて去っていった
どうしたものかと頭を搔く
とりあえず、保健室に運び、備品管理室に個性事故にかかったと連絡を入れた
――12歳若返ったってことは…15歳か
体も華奢で、まだあどけなさの残る寝顔を見つめる
スマホはぶつかった時の衝撃でか壊れてしまっていた
「また厄介な個性事故だね、記憶も12年前なのかい?」
「らしいです、俺のことを覚えてたらいいんだが…」
でも覚えていたところで、12年前の俺は18のはずだ、
いきなり30のオッサンが相澤消太ですと言って信じてもらえるのだろうか…
「校長に言ってこの子の履歴書もらって住んでいるところを教えて貰っておくから、授業が終わったら送ってやりな
この子頭打ってるから、あと2時間は目を覚まさないよ」
リカバリーガールにそう言われて保健室を追い出される
俺はため息をつきながら廊下を歩いた