第15章 確信の何歩か手前
〜咲良side〜
鏡を覗くと首元のキスマークは大体薄くなってきていた
相澤先輩に付けられたものは、まだ1日分濃いけど…
あれからと言うもの、相澤先輩に会うのが毎朝億劫でしかたがない
視線が、なんだか今までのものとは違って
ドキッとする…
もともと、わたしの好きなタイプは相澤先輩系だ
寡黙で、優しい大人の男の人
元婚約者も年上だったし
年下と付き合うのは電気くんが初めて
もちろん電気くんは大好きだし、ちゃんと本気で付き合っているけれど
再会して大人の色気のある先輩に
キスマークまで付けられて
意識しないでいられるほど
私は純粋じゃなかった
幸い、電気くんも自分がつけたものかどうか分からなかったみたいで
「あれ?オレここにも付けてた?」
ってくらいのもんで…
どうにかバレずにいるけれど
はぁ…とため息をついて廊下を歩く
ボーッとしていたせいで、人にぶつかってしまい
抱えてたノートとペンケースを落としてしまった
『あ、すみません……
って……先輩』
運悪くぶつかってしまった相手は相澤先生
「大丈夫か?」と言って散らばったペンを拾ってくれる
そのうちの1本を手に取った時
相澤先輩の表情が変わった
先輩の手元を見ると
――(あれ…電気くんのだ
やば、借りたままわたしのペンケースに入れちゃってたか…)
よりにもよっていかにも男らしい稲妻マークのボールペンをみられてしまう
パステルカラーばかりの私の持ち物の中でそれは異色すぎた
「これ……咲良のか?」
先輩が口を開く
何か、何か言わないと、誤魔化さないと
『あー、お父さんのです借りたままにしてました、ははは』
うん、我ながら嘘が下手すぎる
こんなチャラチャラしたボールペン持ってる親父ってどうなんだ
「今から変なことを聞くけど、
もし違ったら忘れてくれ」
相澤先輩の目が赤く光る
「これは、上鳴電気のボールペンだよな」