第15章 確信の何歩か手前
昔の彼女が、今自分の教え子と付き合っているなんて
有り得ない仮説を頭から振りほどく
でも、同時に付けてきたキスマークや、その数
上鳴から香る咲良の匂い
そして、注意をして見れば
毎日飾っている花を、上鳴だけが注意深く見ていることにも気がついた
気にしすぎかと思ったが、机の上に置いていた植物図鑑に
仮説は徐々に強い疑心へと変わっていく
そんなある朝、咲良がいつものように花を持ってきてくれたとき
ふと、咲良が付けているヘアピンが気になった
どこかで見たことがあったから
桜のモチーフが付いたそのヘアピンは
光に当たるとキラリと光った
女と関わることなどない俺が、いつどこでそのヘアピンを見たことがあるのか
それが分かったのは数日後だった
前から言っていた小テストを生徒達に受けさせる
プリントを配り「はじめ」と言い渡すと
全員一斉に解き始めた
その時、目に入ったのは
見間違えるはずもない、あの桜のヘアピンで…
テスト中だけ、いつも長い前髪を留めている
上鳴電気の頭に、それは付いていた
背中に冷や汗を感じる
なんで男のお前が、そんな女物を付けているのか
そしてなんでそれは咲良と同じものなのか
たまたま?
いや…たまたまにしては無理があるだろう
疑心は、確信の何歩か手前まできていて
ただ真面目に、テストの答案を解く上鳴を見つめる
咲良と…上鳴
どう考えても、おかしい組み合わせだった
有り得ない、そう思い込もうとするも
幾つかある仮説を裏付けるには十分すぎる証拠に首を降る
あってたまるものか
12歳も離れている15歳の学生と、27の社会人
やはり、どう考えてもおかしかった
でも目の前の現実は確かに俺に伝えてくる
その「おかしい仮説」が真実であるかのように