第15章 確信の何歩か手前
5限目、対ヴィランの戦闘訓練
コスチュームを身にまとった生徒達に指示を出す
4人と1人教員が仮想ヴィランの待つ演習市街地に繰り出し
残りの生徒と教師は待機
緑谷、轟、瀬呂、葉隠がオールマイトと共に出発したのを見送る
モニターも無ければ見学もできない
特にやることもない生徒達は雑談に花を咲かせているようだった
「ねぇ、上鳴ちゃん
その首元のは、なあに?」
蛙吹が上鳴の首元を除きながら尋ねる
「あー、やっぱ目立つ?」
上鳴はあちゃーとわざとらしく頭をかいて笑った
「うわ!ホントだ…けしからんものがついてるよー!」
芦戸が嬉しそうにからかうと、上鳴は照れたように笑った
「いや、昨日彼女に付けすぎたら怒られてさ
で、じゃあ俺にもつけていいよって言ったら
くっきり付いた」
「けしからんなー、彼女に何個着けたん?」
「首に5個」
付けただなんだと、一体なんの話か
特に興味もなく聞き流す
それより眠い、モニタールームが故障中なんて合理性にかける
本来この時間は他の生徒の動きを見て評論するべき時間だ
オールマイト班が終わり、次は俺の班だった
「つぎ、俺と一緒に出発する、麗日、上鳴、爆豪、芦戸
前に来い」
4人が前に出てくる
その時、上鳴の首元に
小さいが、ハッキリとしたキスマークが付いていることに気づいた
――昨日彼女に付けすぎたらおこられて
――首に5個
……まさか、まさかな…
脳裏を掠めたのは一つの、仮説
(咲良の彼氏が、上鳴電気)
いや、無いな、と冷静になる
12も離れているし
接点がない
だけれど、上鳴に近づけばやはり香る咲良の匂いが
おれの仮説を、もしかしたらと思わせるに至った
信じたくはないけれど