第14章 君は誰のもの
朝目覚めると、まだ時計は本来の起床時間の一時間前を指していて
それでもスッキリと目覚められたのは
昨日それだけ疲れていて、質のいい睡眠を取れたんだなぁと
ぼんやりと布団の中で考える
とてもいい夢を見た、内容はよく覚えていないけれど
多分電気くんが出てきたと思う。
ふたりでどこかに出かけるような、
ただ楽しくて、甘くて優しい夢
目の前にある綺麗に整った顔は
口を半開きのまま
すやすやと寝息をたてている
チュッと頬にキスをして
布団から出てから、シャワーを浴びた
熱いシャワーを浴びると身体がシャンとする
頭にバスタオルを乗せたまま、仕事着に着替えて
歯ブラシをする
今日の分の花を用意しようと両手の平をかざすと
白い小さな花がいくつも付いたサギソウが出てきた
「夢でもあなたを想う」
いつも素直に私の気持ちを表してくれるこの個性が
今は好き
職員会議があるからいつもより1時間早く出なければいけない
まだベッドに沈む彼を残して家を出た
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『おはようございます』
職員室で相澤先輩に花を渡す
「あぁ、ありがとう
……!」
相澤先輩の目が今迄にないほど開く
『…どうかしましたか?』
「いや…なんでもない」
先輩はふっと顔を逸らし、机に向かう
その後の職員会議でも、
先輩とは一度も目が合うことなく終わって
それどころか、ほかの先生方とも目が合わないし
なんだか少し避けられている気さえする
どうしたんだろ…
なんか失礼なことしちゃったかなぁ…
会議室から備品管理室に戻っていると
プレゼントマイク先生が肩を叩いてきた
「HEY!HEY!咲良ちゃんー
どうよ、雄英にも慣れてきた?」
『あ、おはようございます
はい、おかげさまで!』
「ならよかった、
でだ、みんな言いにくそうだから俺が言っちゃうんだけどさぁ
ココ、閉めた方がいいよ?」
トントンとワイシャツの第一ボタンを指で叩かれる
『え…?』
言ってる意味がわかった時には
顔に熱が一気に集まって
『うわ、もしかして!』
ポケットから手鏡を取り出して見ると
首にはいくつも付けられたキスマーク