第13章 すれ違い絡み合い
〜相澤side〜
爆豪が派手に演習場の建物をぶっ壊した
あいつの個性は戦闘にはむいているが、救助となると不向きだな
機動性もあるんだからもう少し精神面を鍛えて柔軟に対応できるようになればいいのだが…
砂埃でほとんど暗視鏡も使い物にならず、どうしたものかと頭をかいていると
また甘いジャスミンの香りが鼻をかすめる
「上鳴か?」
気配の方を向くと、今度のこの香りの持ち主は咲良だった
「咲良?」
名前を呼ぶと返事が返ってくる
一瞬幻覚でも見てんのかと思ったが…本物のようだ
さっきの爆豪の破壊した建物を遠目で見ながらため息を吐く咲良
その時、爆発音と共に
瓦礫が咲良をめがけて飛んできた
「咲良!!」
すぐに捕縛布で引き寄せ、体で瓦礫から咲良を護る
「大丈夫か?」と声をかけると、腕の中に収まる咲良
一瞬息をするのも忘れてしまう…
あの頃と同じように、咲良を抱きしめていること
でもあの頃とは違う、さらに女性らしく成長した咲良の体はどこもかしこも柔らかい…
このまま唇を奪いたくなる衝動に駆られるが
一拍おいて、咲良に突き飛ばされてしまう
『っ!あ、ご、ごめんなさい!』
慌てて謝る咲良
俺も一気に正気に戻される
助けたどさくさに紛れて何をやっているんだ…
「いや…いきなり悪かった…」
それしか言葉が見つからない
咲良はあからさまに申し訳なさそうに肩を落とした
大丈夫だと伝えたくて髪を撫でる
自分はどうかしてしまったのか
ヒーローを名乗る己が、
相手の許可なくキスをしようとするなんて…
演習を終えた生徒たちを集めて指導をするが
頭のどこかで、咲良のことが気になってしまう
さっき腕の中に感じた柔らかさ
押し付けられた胸の感触…どれも鮮明に思い出せる
真面目に俺の話を聞く生徒たちの後ろに
演習場から帰ろうとする咲良が目に入った
「咲良」と呼び止めると
ビクリ!と体を強張らせ恐る恐る振り返ってきた
別に後で報告書を見ればいいのに…なんて自分で思いながら
咲良の背後からパラパラと書類を覗く
自分でも少し近いか?と思う距離