第13章 すれ違い絡み合い
ドクン!と身体中の血がいっせいに流れるような感覚に襲われる
危険だ、これ以上傍にいると…
そう思った時には先輩を突き放していた
『っ!あ、ご、ごめんなさい!』
「いや…いきなりで悪かった」
暗視鏡では表情が見えない
感情の起伏が元々わかりにくい先輩の声では怒っているのかいないのか測ることもできない
『すみません…』
小さく謝ると、頭をぽんと撫でられる
私は胸がうるさく鳴るのを抑え込むように深く深呼吸をした
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建物の確認作業を終えて演習場の外に出る
いきなり明るくて目がしぱしぱする
ゆっくり目を開くと、1-Aの生徒さん達が
相澤先輩から反省点の指導を受けているところだった
私がここに来ているとは知らないであろう電気くんも
真剣に先輩の話を聞いている
私はみんなの邪魔にならないようにゆっくりと後ろを抜けて戻ろうとするのだが…
「咲良」
相澤先輩に呼ばれて、1-Aの人たちが一斉に私の方を振り向く
電気くんは『え!』と小さく声を上げたが
すぐに口を塞いでいた
『は、はい…』
呼ばれたことに返事をすると
「全壊か?半壊か?」
相澤先輩が私に近寄って後ろから覗き込むように
私の胸元に抱えていた資料を捲る
(きょ、距離が近いな…)
耳元に息がかかるほどの距離に緊張してしまう
チラリと電気くんに視線を送ると
なんとも言えない…苦虫を噛み潰したような顔をしていた
「後で報告書を持っていく」
『いえ、取りに伺うので大丈夫です!』
先輩にそう告げると、「そうか…」と言って
少し笑ってくれる
『失礼します』
先輩と生徒さんにぺこりと頭を下げ、備品管理室に小走りで戻る
さっきの電気くんの表情が
瞳に焼きついたように離れない
あんな切なそうな顔をされると
ヤキモチ焼かれてるみたいで…すこし
嬉しくなってしまう私は、悪い女だ