第11章 恋敵と書いてライバルと読む
〜咲良side〜
翌朝も、昨日と同じように時間をずらして登校する
登校してすぐ、職員室に顔を出し、相澤先輩の席に近づく
『おはようございます、先輩』
「相変わらず早えな」
『先輩ほどじゃないですけどね』
ガランとした職員室には相澤先輩と私だけ
私の15分前行動以上に相沢先輩は20分は早く行動している気がする
『これ、今日の花です』
差し出す花はつつじ
家で出して簡単に包んできた
「つつじ、か?」
『はい、花粉も少ないし飾るにはいい花ですよね』
つつじを受け取る先輩
たしかに、電気くんが言ってた通り、相澤先輩×お花ってイメージ無いかも
「昨日はどうだった、出来そうか?」
『はい、なんとか
ありがとうございます
貴重な時間を使っていただいて学校案内まで…』
「いや、いい
何か困ったことがあれば俺を頼れ」
『先輩…ありがとうございます』
先輩の優しさに嬉しくなる、プロヒーローになっていたことは驚いたが、大人になった先輩は昔と同じくらい優しくて、謎に色っぽくて
話すのもすこし緊張してしまう
『では、失礼します』
頭を下げて、立ち去ろうと振り返ると、
「待て…」
手首を掴まれた
『?』
振り返って相澤先輩を見るも、特に何も言葉が続くわけでもなく
沈黙が続く………
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〜相澤side〜
咲良が、行こうとするのをとっさに止めてしまった
手まで掴んだのに、何も言うことも、用事もない
(……どうすんだよ)
ただ、見つめ合った状態で沈黙が流れる
何か言わないと不審がられるだけなのに、本当に何も出てこない
咲良の肌が白いなとか、なんでそんなに髪が柔らかそうなのかとか、まつ毛が長い事とか
そんなのばかり目について、頭の中を埋めていく
触れたいと言う気持ちが
『先輩?』
咲良が首を傾げて聞いてくる
『どうかしましたか?』
どうしたんだろうな、俺が聞きたいよ
お前から目が離せない、瞬きするのも億劫なほどに
「いや…なんでもない」
やっと出せた言葉はそれだけで
手を離し、机に向かう
『また何かあったら言ってください』
「あぁ」