第9章 再会は突然に
『聞いてない!聞いてないですよ!』
「まぁ、立ち話もなんだ、校長も待ってるから早く行くぞ」
テンパる私を残して相澤先輩はスタスタ校内に進んでいく
「おい、一緒に来ないとセキュリティセンターに引っかかるぞ
早くしろ」
『あ…はい…』
ここまで来てはしょうがない…とりあえず面接だけでも受けよう…
電気くんに出くわしませんように…そう願いながら先輩の背を追いかけた
「採用だね!」
目の前にいるのはネズミ?クマ?
校長と紹介された根津はツヤツヤとした自身の毛皮を撫でながらそう言い放った
『あ、あの私…名前しか言ってないんですが…』
「うん、採用!」
さっぱり頭がついていかない、名前を言っただけでこの天下の雄英高校で働けるなんてありえないだろう
「僕程になってくると、見ただけで相手の本質がわかるのさっ!」
ポカーンとした顔の私にそう言う根津校長
よく話を聞けば、個性のハイスペックのお陰で相手の人となりは第一印象で分かってしまうらしい
「天才ではないが、真面目で努力家、前の会社でもいい成績を残したタイプだろう?根本的に性善説派だけど、経験から慎重な性格になっているから口も硬い秘密主義だね。
上からは可愛がられて、下からは舐められやすいのかな?童顔なのも原因だね!」
良くぞここまで見切ったなというほど的確
どんな凄い占い師でもここまで当てれないだろう
特に下から舐められるのは本当だ
後輩からはいつの間にかタメ口を使われていることが多い
あまり気にはならないけれど
「ウチは秘密が守れるのが第一条件だからね
君みたいな口の硬いタイプは大歓迎さ!
それに、あの相澤くんが勧めるくらいだ、期待してるよ」
『あ、あの、、、私…』
どうしよう、まさか採用になるなんて
電気くんのこともあるからできればここで働きたくない
電気くんとのことが無ければ大喜びで働くところではあるのだが
根津校長は私をまじまじと見てくる
可愛らしい目は何もかも見通すスコープみたいだ