第6章 新しい場所
部屋の引渡しを終えて、私は1人で空っぽの新居にいた
窓からは雄英高校が見える
『電気くん、頑張って勉強してんのかなー』
ベランダで風に吹かれながら彼を思う
金髪の彼はいつも優しく、面白く、そして男らしい
何も無い部屋に花でも飾ろうと手のひらをかざす
幸せな時はいい
更に幸せを感じれるから
『黄色のヒヤシンスか』
あなたとなら幸せ…その意味を持つ花が私から生まれる
一輪挿しの花瓶に飾った
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チャイムが鳴って買った家具が搬入されていく
ベッドと、テレビ台、ソファー
テーブル、そして椅子が2つ
カーテンを掛けると一気に部屋っぽくなる
そう言えばお腹がすいたなーなんて思ってキッチンに行くけれど
冷蔵庫は空っぽだし、フライパンもないことに気づく
電気くん帰ってきたら買いに行こうかな
なんて思いながら、とりあえずコンビニに
お弁当と、プリンを買って帰る
プリンは2つ、電気くんのと、私の分
お弁当を一人で食べていると電気くんから電話がかかってくる
出ると、テレビ電話だった
[やっほー!咲良、引越し進んでる?]
『わりと進んでるよー
今休憩?』
テレビ電話の画面がガサガサと揺れる
[え?彼女?][見せろって!]
[ちょっ、今オレが話してんのに]
[ちょっと顔見たかっただけだから、
咲良の顔見たら元気でた!午後の実技演習も頑張る]
[ひゅーーー]と茶化す声が聞こえる
電気くん、そういうこと、恥ずかしくなく言っちゃうタイプなんだ
『うん、お疲れ様
次の授業も頑張ってね』
手を振って電話を切る
本人も自覚している通り、電気くんは割と彼女にベタベタするタイプで
一緒にいてもどこか触れ合っていたいみたい
多分この部屋が完成したら、高確率で入り浸るんだろう
それなら、大人として責任をもって、御両親にご挨拶に行かなくてはいけない
反対されたらどうしようって気持ちもあるけれど
でも、そこはどうしても未成年くんと付き合うには必要な手順であるから適当にはできない
そんなことを考えながら新しいベッドに横たわると
いつのまにか微睡みの中に落ちていた