第3章 ここから始めて
「いってぇ!!!」
裕太が電気くんに触れただけで
バチっと弾かれ尻餅をついて倒れた。
私は何が起きたのか分からず、電気くんの腕の中に引き戻される。
「弱ぇーな、そんなんじゃ咲良は守れねぇよ
諦めなオッサン
一生後悔しとけバカ」
その言葉に何も言い返せないでいる裕太を置き去りに
私達は会社を去った
「悪ぃ、勝手なことして…」
『ううん、助けてくれてありがとう
電気くん居てくれてよかった』
裕太に掴まれた腕をさする
手の形にくっきり赤くなっていた
『もう大丈夫だから』
「今からどうするんだ?」
『今から一回部屋行って、荷物とってから
ホテルに行こうと思ってる』
そう答えると、電気くんは少し考えて
「付いていく、あいつが咲良追っかけて来るかもしれねぇし」
『そっか…なら手伝ってもらおうかな』
心配させたくなくて無理矢理笑うと
電気くんが頬を撫でてきた
「オレの前では、無理して笑うなよ
怖かっただろ?」
そんなことを言われると胸が苦しくて
私は電気くんの胸を借りて少し泣いてしまった
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タクシーで私の家だった場所に戻ると
昨日のままの乱れたベッドが目に入ってきた
不思議と何も感じなくて
自分の荷物だけをスーツケースにもくもくと詰めていく
『よし、これで全部!』
鍵を閉め、捨てるようにポストに鍵を落とした。
「これで、咲良は完全にオレのって事でいいっすか?」
『そゆこと…かな』
そう答えれば嬉しそうに笑う電気くん
ーーーでも私はまだ心の底からは笑えなかった
電気くんのことも、信用できてなかった
男なんて、若い子が好き
最初だけ優しくて、だんだん愛は覚めていって…
電気くんだって、やっぱチャラそうだし、大人びていても子供だし
すぐに私に飽きてほかのJKと付き合い始めるだろう
それでも、そうなったとしても今は彼を頼っていたい
何日間かだけでいいから
そんな自己中心的な考えが心を浸す
「咲良?」
それでも、やっぱり名前を呼ばれると嬉しくて
手を握られると安心した
私は惚れっぽい女だなぁ
すぐ終わるとわかっていても、ときめいてしまうんだから