第19章 もしそうだったとしても
目がさめると、電気くんは居なかった
時計を見ると12時で、丸半日眠ってしまったらしい
よろよろ立ち上がり、顔を洗おうと洗面所に向かうと、
机の上に小さい手紙が置いてある
「めっちゃ気持ちよさそうに寝てたから
起こさなかったわ
すぐ帰ってくるから
いい子してまってろよ♡」
咲良は、『はーい』と紙に向かって返事をする。
その後、洗面所で
鏡を覗き込み小さく悲鳴をあげた
肩が、ほんのり光っているのだ
『なに…これ……』
手で押さえて見るけれど、特に痛くもなくて
ただ、光っている
咲良は布団の中に潜り込んで
どんどん範囲の広がっていく光を抑え込もうと
自分の体を抱きしめた
けれど抵抗もむなしく、一時間ほどで、体の四番の一ほど光に包まれてしまう
『やだ…やだよぉ』
ポロポロ涙がこぼれて
不安で不安で仕方がない
離れたくない
このままこの年齢のままでそばにいたい
そうしたらきっと、普通のカップルでいられるのに
電気くんが何と言ってくれても
やっぱり、女の方が男より12も上なんておかしいし
きっと27歳のわたしも、引け目を感じている
ただでさえ相手は雄英高校のヒーロー科だ
わたしは、普通の私立高校で個性だって大したことない…
でもそこは今更変えられない…ならせめて
年齢だけでも…
もう体の半分は光に包まれている
体が何度も引っ張られるような
意識も朦朧としているけれど、気持ちでどうにか引っ張られないように留まっていた
てのひらを、そっと合わせると
体の中から、溢れる想いがいくつもいくつも零れだしていく
勿忘草、シオン、月下美人、ミヤコワスレ、ネリネ、蓮、キンセンカ、センニチコウ、ライラック
伝えたい思いが花になって残ってくれれば…
いつの間にか溢れだした花は、ベットを埋め尽くして
床にこぼれた
こんなに花を出したのは初めてで
体力がなくなってしまった。
『電気…くん…』
小さく呼んでみる、
この名前が大好きだ…
彼によく似た花が見たくて、最後の力を振り絞って
手を広げると
大きな大きなひまわりが出てきた
それを抱きしめて、涙を流す
『電気…くん、でんきくん…』
「咲良!?」