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【跡部】All′s fair in Love&War

第15章 夏の魔物に連れ去られ(中編)




月の下に朧気に浮かんだ姿を目指し歩く。履いていたサンダルと足の間に砂が入り込んで、気持ち悪かったからアスファルトに放り投げてきた。裸足になった肌が砂と触れ、ぺたぺたと音が鳴る。夜になり冷えた砂がさらさらと心地良い。

そして月の光に仄かに照らされた跡部を見つけた。黒い空を見上げ、目を逸らさない跡部。珍しく気付かれていないようで、驚かせてやろうとほくそ笑みながら近付く――が、近付くほど、それが躊躇われた。

イケメン、なんてそんな陳腐な言葉じゃ表現出来ない。囁かな風に靡く髪、毎日紫外線に焼かれているはずなのに白さを残した肌。跡部は、本当に、綺麗。



どうしよう、気付かれないうちに部屋に戻ろうか――そう逡巡していると、跡部がこちらをちらり、と見て、来ないのか、と尋ねてくる。どうやらとっくに気づいていたらしい、驚きもしない跡部の様子に恥ずかしくなったが、隣に並ぶ。


跡部に倣って空を見上げてみると、真っ黒だと思っていた空には数え切れない星々が浮かんでいた。しばらく見上げていると、跡部がこちらをじっと見ていることに気付く。


「もう、大丈夫よ」


心配してくれているのかな、と思いそう言ったが、そうか、と歯切れの悪い返事が返ってきたきり、また訪れる静寂。いつもならドキマギしている所だが、雰囲気に飲まれているのか、平然としていられた。


「宍戸に言われた事だが…確かに、調子に乗っちまってたのかも知れねぇ」
「…何、どうしたの」


いつもより潜められた声は弱々しく聞こえる。顔を見ていてはいけない気がして、夜空に目を戻す。


「宍戸が様子がおかしいのは気付いていたが、あそこまで追い詰めていたとは気付かなかった」


まるで後悔しているような声色に、心が痛む――


「そして宍戸に気を取られていたら、松元の不調にも気づけねぇ、なんてザマだ」


自嘲するように言い捨てる跡部。――そうだよね、


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