【跡部】All′s fair in Love&War
第14章 夏の魔物に連れ去られ(前編)
その後跡部付きの執事――ミカエルさんから今日は特別波が高い、との進言を受け海は取りやめになり。ひとまずフリータイムだ、と結論が出て皆がそれぞれの部屋に解散になった。
一人の部屋に入って考える―――茉奈莉ちゃんはきっとジロちゃんと一緒だろう。練習する奴はいるのかな?
ひとまずジャージに着替えてコートに下りてみると、やはり一番日の高い時間だからか、そこには跡部とヒヨ、ちょただけだった。流石一年はやる気が違うよね!と感心していると走り込みを終えた宍戸もコートに入ってくる、そして顔ぶれを見ると、ため息をついた。
「おい跡部、練習するのはコイツらだけかよ…あとの奴らはどうした」
「今は自由時間だと言ってあるからな、涼しくなったら出てくる奴もいるんじゃねぇか?」
「お前…此処には、合宿に来たんだろうが!?」
宍戸が声を荒らげながら跡部に掴みかかる。ちょたが宍戸さん、と小さく声を上げ、心配そうにそれを見ている――ヒヨも、動きを窺うように、ストレッチを止めてじっとこちらを見つめている。
「お前、遊びに来たんじゃねーだろ!?それとも何か、部のトップになったからって胡座かいて余裕かましてんのかよ!!」
「宍戸、待って。息が荒いし顔も赤いままだよ、水分取って冷静になって」
「んだよ松元…マネージャーは黙ってろ!」
あたしにまで攻撃的な宍戸。本当にいつもの宍戸らしく無くて、少し怖気づきながらも、落ち着かせたい一心でわざとゆっくり声を掛ける。
「そんな事言われても、倒れられたら困るし…それに、ちょたやヒヨを戸惑わせたままなのもイヤなの」
その言葉に、宍戸ははっと気付いたように後輩2人を見て、跡部の胸倉を掴んだ手をゆっくりと下ろす。そしてあたしからボトルを受け取ると、喉を鳴らして中身を飲み干した。
「日吉、鳳。聞きたかったら聞いていろ」
あたしは席を外した方がいいのかな?そう思いながら跡部の顔を窺うと、ここにいろ、と言うようにこちらを見て頷いたから此処に居ることにする。