【跡部】All′s fair in Love&War
第12章 秘密は砂糖より甘い(後編)
「やぁっと座れたー…」
「なんか今日、疲れたわねぇ」
「守河と松元はまだいいじゃん、俺なんかもっと疲れたしー」
部活終わり、約束通りクレープ屋さんに寄ったあたしと茉奈莉ちゃんとジロちゃん。どこもかしこもカップルで溢れる街中、クレープ屋さんも例に漏れず。やっと空いた4人がけのテーブルに座り、一息つく。
結局あの後、正レギュラー各々にチョコを渡して回ったが。跡部は何やら機嫌が悪いようで、「おう」と一言だけだった。ほかの一年メンバー…ジロちゃんや忍足達はすっごく喜んでくれたのに!いつもならイライラする所だが、跡部はその後もチョコの仕分けだか何だかがあるみたいで忙しく動き回っていて、会話も出来ない。今日が今日だから少ししゅん、としながら学校を出た。茉奈莉ちゃんが誘ってくれていて良かった――
「さ、注文何にする?あたしまとめて買ってくるよ!」
「何言ってるの、私のおごりだって言ったでしょ。でもね、まだ一人来てないから待ってなきゃなの」
「え?誰か誘ってたの?」
そこでジロちゃんがおーい、と立ち上がり手をヒラヒラと振る、その先に居たのは跡部だった。
「…あぁ、跡部ね…」
もうチョコはあたしの手元にはない、かえって清々しい位だった。仮に持っていたとしても、皆の前でなんか渡せるはずもない。
テーブルに近寄ってくる跡部を迎え入れるために、椅子をずらし振り向く――
「…え!?どーして!!?」
「何デカイ声出してやがんだ松元、アーン?」
その手に持たれていたのは、確かに箱に入れたはずのあの包み。見間違えもしない、ゴールドと青の特徴的な紙袋。中には揃いの小さな箱が入っていて――
「わ、どーしたのさ跡部。それ、オメェの好きなやつじゃん」
「あぁ?箱の隅に置かれていたのに気付いてな、こいつだけ取ってきた」
「へー、いいなー!美味いよなーそれ!」
「…やらねぇぜ」