【跡部】All′s fair in Love&War
第11章 秘密は砂糖より甘い(前編)
にこり、と笑った茉奈莉ちゃんに、有無を言わさず口内に放り込まれたチョコは、もう一対とは違う、甘い甘いミルクチョコだった。以前に跡部に貰ったものとは全く違う美味しさに、思わず頬が蕩けそうになる。
「お、おいしぃいいい…!」
「ほんと、お上品な甘さでいくらでも食べれそうね!」
「あたし、こんなに美味しいチョコ初めてだよっ」
「ふふ、私も」
茉奈莉ちゃんも美味しそうに食べてくれている、やっぱり値は張ったけどこのチョコにして間違いなかった!そう思いながら改めて箱の中身を覗いてみる。
「わ、赤いハートのチョコがある!」
「可愛いわね、バレンタイン仕様なんだ!これは私が貰っていいかな?」
「勿論だよ、茉奈莉ちゃんのために用意したんだから!」
「ふふ、嬉しいな。千花ちゃんのハート、もーらいっ」
そう、茉奈莉ちゃんと跡部に食べて欲しくて…そこまで考えて、あたしの気分は少し落ち込んだ。渡せなかったら他の人に、と思っていたけれど。あれは、奴のために選んだ物だ。それをあげてしまっては、あの日緊張しながらチョコを買ったあたしにも、貰ってしまった相手にも失礼なんじゃ…?
「…千花ちゃん、何かあった?」
考え込んでしまったあたしに気付いたのか、茉奈莉ちゃんの問いかけ。しかしあたしは小さく首を振った。
「…私には言えない事なのかなぁ?」
茉奈莉ちゃんの再度の問いかけに、今度は大きく首を振る。
「違うの、茉奈莉ちゃんに助けて貰わずに自分で考えなきゃいけないことなんだ」
「…そう…」
茉奈莉ちゃんはほんの少し考えるような顔を見せたが、しかし次の瞬間思い切り顔を顰めた。
「…手助けするのは癪なんだけどなぁ」
「え?何?」
「ううん、何でもないっ」
次の瞬間にはいつもの綺麗な笑顔に戻っている茉奈莉ちゃん。何だったんだろ?
「ねぇ、千花ちゃん。ごめんね、私…今年は、交換のお菓子を用意出来ていないの」
「え、そんなこと…全然大丈夫だよっ」