【跡部】All′s fair in Love&War
第11章 秘密は砂糖より甘い(前編)
「…予想以上だった…っ、」
授業間のたった五分の休みだろうが、学年を問わず女子生徒がうちのクラス…いや、跡部の元を訪れていた。昼休みの今もそう、あからさまに苛苛とした声で対応する跡部。教室を取り巻く女子生徒たちの壁をやっとの思いで抜け、茉奈莉ちゃんと待ち合わせしている渡り廊下のテラスに向かう。
昼は仲の良いテニス部員で集まったりすることも多いが…忍足とジロちゃんのクラス、がっくんと宍戸のクラス、タッキーのクラスも満員御礼状態。心の中でご愁傷様、と手を合わせながら通り過ぎる。
「茉奈莉ちゃんっ」
「千花ちゃーん!」
こっちこっち、と手招きをしてくれる茉奈莉ちゃんは今日も綺麗だ。五分ほど遅れてしまったあたしを責めることもなく、ニコニコと微笑んでくれている。
「茉奈莉ちゃん、いつも有難うね!これ、受け取って」
「わぁ…千花ちゃん、有難う!ってこれ、随分高価なチョコ…よね?」
茉奈莉ちゃんにも跡部と同じショップでチョコを購入していた。跡部の物とは違う、バレンタイン用の赤いリボンが巻かれた可愛いラッピングの箱。茉奈莉ちゃんは暫くニコニコとそれを眺め、恭しい手つきで丁寧に箱を開けていく。
「美味しそう、分けっこしましょ、ね!」
「えっ、でも…茉奈莉ちゃんに買ってきたんだし」
「いいのよ、千花ちゃんと食べた方が美味しいに決まってるもの」