【跡部】All′s fair in Love&War
第11章 秘密は砂糖より甘い(前編)
「ううん、そんな事じゃ私の気が済まないのよ…だからね、帰りにクレープでも食べに行かない?私に奢らせて欲しいの!」
「ほんと?嬉しい、喜んで!」
「ジロちゃんも一緒で…いいかなぁ」
「勿論だよっ!楽しみにしてるね」
約束を交わし終わった瞬間、昼休みが終わるチャイムが鳴り響く。急いで立ち上がったその時、校内に設置されたスピーカーがじじっ、とくぐもった音を立てた。
「皆、よく聞きな」
「あ、跡部…?」
スピーカーから聞こえてきたのは、よく聞き慣れた声。今日一日に限っては、殆ど聞いていないが。
「今日はバレンタインデーだかなんだか知らねえが、多くの生徒共が浮かれすぎだ…そこで、我がテニス部ではこれ以降、手渡しの物は決して受け取らねぇ」
そこまで聞いたところで、あちこちの教室から悲鳴めいた声が聞こえてくる。
「だが、折角の気持ちを無碍にするつもりもねぇ…テニスコートの前に、部員各々の名前を買いた箱を設置しているから、そこに入れな。責任を持ってそれぞれに渡してやる」
ただし、無記名のもの、手作りと見受けられる物は申し訳ないが処分の対象とさせてもらう…などと言って、放送は切られた。一年ながらに生徒会長、その特権を存分に使った振る舞いにため息が漏れる。
そして、ここであたしのチョコの運命も確定した――