【跡部】All′s fair in Love&War
第9章 carnival night!
「…何してんの、」
自分でも驚く程に、冷えた声が出た。
保健室に入ると目に飛び込んできたのは、守河の上に乗っかっている朝倉。かっと頭に血が上ったのが分かる。守河はなんて事無い顔をしている――
「ジロちゃんだぁ、ねぇ、写真撮って?」
「へ?」
「私が襲われてるって、証拠に、ね?」
朝倉は真っ青になって守河の上から飛び退くと、服の乱れも直さずに俺を押しのけて保健室から出ていった。同意の上じゃなかった事に何処かほっとしつつ、守河を改めてよく見る。カッターのボタンが外され、さらけ出された胸にまた怒りがこみ上げてきて、顔を伏せた。
「良かったぁ、ジロちゃんが来てくれるかなって思ってたんだぁ」
「…なんで、抵抗しなかったんだよ」
「だってー、抵抗して殴られたり無理やりいれられちゃったりしたら痛そうだし」
いつも通り、何も変わらない守河。悲しいような、寂しいような、複雑な思いがこみ上げてくる。
「…とりあえず、無事でよかったよ」
絞り出すように声を出して、守河のボタンをとめてやろうと手を伸ばしたその時。守河があ、と小さく声を上げた。
「どーしたの」
「ジロちゃん、それ」
守河が指さす先。俺の中心。冷えきった頭と心とは別に動いているようで、大きく自分を主張していた。
「ちょ…!気付いても言うなって…!!」
情けなさと恥ずかしさで、思わず泣きそうになる。これじゃ、朝倉の野郎と何も変わらない…守河をそういう風にしか見ていないみたいだ。
真っ赤になっているだろう、熱くなった俺の頬に、冷たい守河の手が触れた。