【跡部】All′s fair in Love&War
第1章 親愛なる帝王様
「は、跡部…松元…?」
「がっくん、忍足っ…!!」
「いや…自分ら、何してんの、」
丁度いい所に入ってきてくれた!救世主ことがっくんと忍足は、あたしと跡部をぎょっとした顔でしばし見つめる。そして辺りをくるり、と見回し…
「スマン、邪魔したなぁ♪」
「ごゆっくりぃ♪」
と、二人揃って跳ねた声を出し、急ぎ扉を閉め走り去った。あたしから顔を離して、扉を見やる跡部。
跡部の言う通り、何ドキドキなんてしちゃってるんだあたし――顔が離れて落ち着いた思考は、目まぐるしくぐるぐる動き出す。コイツは誰?部長様帝王様、跡部様?って、いつもいつも偉そうに何様なのよ!!!!
「いい加減どけアホべーーーっ!!」
どん、と胸を押し、怯んだところを腕の中から抜け出す。鍛えてるんだから、一撃くらい痛くも痒くも無いでしょ。
「うっ、てめ、松元…ホントに女かよ、アーン?」
「うっさいわね!タオルはごめん!プリントもごめん!でも元はと言えばこんなに散らかしてる皆が悪いんだからね!ばーかばーかっ!」
反撃を喰らわないように距離を取ってから、捨て台詞を吐いて部室からの脱出に成功したあたしは、熱でもあるんじゃないかってくらい熱い頬をカモフラージュするために、全力で走ってコートに向かう。
コートでは忍足とがっくんが光の速さで広めたあたしと跡部のキス現場!?の噂を聞きつけた部員達の好奇の眼差しと、茉奈莉ちゃんからの厳しい追求が待っているとも知らずに。