【跡部】All′s fair in Love&War
第8章 carnival day!(後編)
「…あとべ、この人たち煙草吸ってたっぽい」
「は!?」
「お前、何を…」
何とか一矢報いたくて放った一言。どうやら図星だったようで、あからさまに慌てた様子の先輩達に溜飲も下がる。
「あぁ…本当だな松元、先輩方、胸ポケットが膨らんでますよ」
――所で先輩方、進路は決まってるんですか?そうにやり、と笑いながら跡部が言い終わらないうちに、二人は走っていってしまった。
「おい、松元」
「……ありがと、」
震えているあたしの声に気付いたのか、跡部がしゃがみ込んだままのあたしの隣に立つ。今更ながらやっぱり怖かったみたいで、手の震えが止まらない。
「…お前はあぁいう輩を上手く相手したり出来ねぇだろ」
「うん」
「そういうのは守河が得意だろうからな、だから接客を任せた」
「うん」
「何も、松元の格好が似合わねぇだとか。そんな事じゃねぇ」
「…うん、」
上から降ってくる声は、さっきまでの冷たさが嘘だったように、優しい。――何処かで、分かってた。跡部の事だから何か正当な理由があるって事くらいは。否定されるのが嫌で、分かりたくなかっただけ。
「だが、お前を悲しませたり、こんな目に合わせた事は謝る」
「あ、あやま…!?」
――あの跡部が?謝る!?そう思わず口に出しそうになって、落ちかけていた涙も引っ込む位だったがなんとか声に出さずに留めた私を、誰か褒めてほしい。それ位、跡部が自分の非を認める事は珍しかった――大して批判される行動を取らない、という事もあるけれど。
「こうして俺様や守河、ジローや鳳…アイツらもいるんだ、何かあったってすぐに守ってやれる。松元の好きにさせてやるべきだったぜ」
――何とも跡部らしくない反省の言葉、声も何処となく暗い。さっき先輩と話していた時も、丁寧な口調だけど凄く怒っているのが隠しきれていなかった、それも、らしくない。本当に、らしくない――あたしも。
「跡部が、守ってくれるの?なら、安心だね」
跡部を見上げ、何ともあたしらしくない質問をしてみると、驚いたような表情を一瞬浮かべ――そうだな、と小さく返してくれた。照れと驚きと嬉しさで、思わず笑ってしまう。