【跡部】All′s fair in Love&War
第8章 carnival day!(後編)
「もう戻れるか、松元」
「ん、」
いつもより優しい跡部が、手を貸してくれて。嬉しくて、素直にその手を頼りに立ち上がると、ずっとしゃがみ込んでいた足はがくり、とよろめき。そのまま跡部の胸に倒れ込む形になった。
「わわ、ごめ…!!」
「…いや、大丈夫だぜ」
いとも簡単に、跡部に受け止められる体――さっきもそう、あたしが幾ら力を入れても、先輩たちの手は解けなかったんだった――
広い胸元に一瞬顔を埋めてしまった、どぎまぎしながらばっ、と身体を離す。しかし、掴まっていた手は離し難くて、ゆっくりと解いた。跡部の顔が見れないまま、もう一度ごめん、と言い、歩き出す。
隣に歩く跡部とは会話も無いまま、でもどちらも速度を上げることもなく、並んで歩く。跡部なりに気を使ってくれているのだろう――自分のいつもの無思慮な行いを反省しながら、みんなの元に戻ると。
「千花ちゃんんんんんんん!!!メイド服可愛いー!!ちょっとジロちゃん!写真撮って欲しいな!」
「お前ら…この忙しいのに、サボって何イチャついてやがる!」
「わ、松元さん!着替えてこられたんですね、とても良くお似合いです!」
一部始終を見下ろしていたみんなに冷やかされたり何やらかんやら、弁解で営業なんてしてる場合じゃ無くなってしまった。
それでもテニス部が余裕の売上ぶっちぎりトップだったのは、もしかしたらあたしのメイド服効果もあったのかもしれない。