【跡部】All′s fair in Love&War
第35章 恋と戦争に手段は問わない(前編)
「ジロちゃんも、今までありがと」
「こちらこそ。いつも四人でわちゃわちゃしてさ、楽しかったよな」
「…ほんと、楽しかった」
その言葉に、茉奈莉ちゃんの腕の力がぎゅ、と強くなった。泣きそうになって肩に顔を埋める。泣かないと決めているのに、と歯を食いしばる――
「そろそろ、守河返して、松元…俺のだから」
ジロちゃんの言葉に、ぱっと顔を上げる。茉奈莉ちゃんを見つめるジロちゃんの目はいつも通り優しくて、でも何処か、説明もできない何処かがいつもと違っている、と感じる。茉奈莉ちゃんを見てみると、真っ赤になった顔――そんな表情、初めて見た。
「…そうなの?ジロちゃん」
「そーなの、お陰様で」
「…そーなの、そーなんだ、ね…!!」
茉奈莉ちゃんを一層強く抱きしめて、それから腕を解く。
「ジロちゃん、私の恩人で、一番大切な友達なの」
「…うん、知ってる」
「宜しく、ね?」
「勿論、そのつもり!」
二人の手が固く繋がれた事が嬉しくて、でも羨ましくて。くるり、と踵を返すと、樺ちゃんと目が合った。
「樺ちゃん!」
「…ウス」
口数が少なくて、でも一緒にいるのが苦じゃない、不思議な空気を持っている子。マネージャーの仕事を一番率先して手伝ってくれた。
「…ね、お願いがあるの」
少し小声で囁くと、大きな身を屈めて耳を貸してくれた。囁きかけた私のお願いに、少し驚いた様子で、でもすぐに優しく目を細め、わかりました、と一言。そして――
「きゃっ…あははっ!!」
「大丈夫ですか、松元さん…」
「うんうん、ちょっと怖いかもっ!!でも最高っ!!」
一度はやってみたかったこと、樺ちゃんにお姫様抱っこしてもらう。軽々とジロちゃんを担いでいるのがちょっと羨ましくて、これを機に頼んでみたら、意外と目線が高くて怖い――でも、しっかりとしていて、落とされる心配なんて微塵も無さそうだ。しかもくるくる、と二回転のオプションが付いて、それから、そっと支えてくれながら下ろされた先。
「あと、べ、」
「…よぉ、楽しそうじゃねーの」