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【跡部】All′s fair in Love&War

第35章 恋と戦争に手段は問わない(前編)




「みんな!朝早くからありがとー!」


わざと大きな声を出して、大きく手を振って、皆の元へ歩き寄る。するとその途中、こちらに向かい足を進めたがっくんに、ふわり、と抱きつかれた。

突然の事で驚くも、何とか踏みとどまって受け止める。


「なぁ、松元、ほんとに行っちまうのかよ」
「…うん、そーだね」
「お前以上のマネージャーなんて、居ないってのによぉ…」
「ほんと?有難う!光栄だねっ」


珍しいお褒めの言葉に、喜んで笑ってしまう。がっくんの真っ直ぐな物言いと、意思を秘めた真っ直ぐな瞳は、いつも可愛い、それ以上に、実は格好良かったんだよね。

そしてがっくんの背後から、がばり、と腕が伸びてきて、二人まとめて抱きしめられた。苦しくて身をよじると、顔を伏せて表情の伺えない忍足。


「ね、忍足、がっくんが怪我しないように見てあげてね」
「松元…いくら俺でも、四六時中は見とけへんって」
「そこを何とか、ね?お願い」
「んん…善処するわ」
「…あと、ね。跡部の事も、宜しく」



私の言葉に、忍足は一瞬腕の力を強める。面倒見が良くて、損する役回りが多いけど、本当に頼りにしてたんだよ。

そこでがっくんがぐえ、と呻いたのに気付き、漸く二人共解放された。そして、がっくんが私に回していた腕も解かれる。



辺りを見回してみると、次は俺だ、と言わんばかりに宍戸が近づいてきた。その後には、ちょたもいる。宍戸はまさかハグなんて…と思っていたらその通りで、ぐしゃぐしゃと伸びてきた手に頭をかき混ぜられた。

折角朝からセットしたのに、と睨んでみると、揶揄する様ないつもの笑顔にはほんの少し悲しみが滲んでいて、何も言えなくなる。


「宍戸、もう髪の毛伸ばさないの?また最近、切ったよね…?」
「あぁ松元、テニスをし続ける限りは、もう伸ばさねぇ」
「うん、さっぱりしてて私はその方が好きだよ!」


最近、自分の事ばっかりで。宍戸の髪がまた短くなっているのにも漸く気付いた事に反省する。その潔さ、思い切りの良さは、うじうじしがちな私にはいつだって羨ましい程だったな、なんて思い返す。


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