【跡部】All′s fair in Love&War
第32章 おわりのそのまえに(中編)
「さっきみたいにさ、ジロちゃん、でいいよ。親とか兄弟がそう呼んでてさ、それならちゃんと起きれんの」
そう言うと、守河は花が咲いたようにぱっと笑った。思わず見惚れて、立ち止まる。守河はぺこり、とお辞儀のように首を傾げた。
「うん、ジロちゃん。宜しくね」
かあっと赤くなる顔は、きっと守河にも気付かれているに違いないのに。守河は鳴り出した予鈴にびくり、と反応すると俺の手を取り、駆け出す。
「ちょ、守河!?」
「大変、ジロちゃん!早速部活、出れなくなっちゃうでしょ!?」
「それは困る!!やっべーー!!」
笑いながら二人で廊下を走り抜ける。やっぱり、初めの予感通り、守河が好きだ、と思う。会ってからの時間なんて、まして、初めて会話してから10分も経っていない事なんて、きっと最早関係ない。
はやる心そのままに、足を動かすと。何とか本鈴には間に合って、また俺たちは顔を見合わせて笑った。