【跡部】All′s fair in Love&War
第31章 おわりのそのまえに(前編)
「ったく…お前は!一日目から何してやがる!!」
「だってー、眠かったんだもんよー。ごめんよあとべー」
結局その後、春の陽気にふわっと誘われた俺は芝生に寝そべり。そこから気付いたら、物凄く怒った跡部の顔が目の前にあって。強制的に職員室に連行された時には、ホームルームも全て終わったと聞かされた。
先生からこっ酷く叱られ、その後こうして跡部にも怒鳴られ、全く散々だ。
「ちゃんと見ろ。この中に知っている名前はねぇのか」
「うーーーーん…いるような、いないようなって感じ」
跡部に送ってもらう帰りの車内、渡されたF組の名簿を二人して眺める。幼稚舎からの知り合いや、テニス部員は全くいない…流石マンモス校、なんて今更関心する。
「チッ…宍戸が隣のクラスだな、暫くは奴に頼むか…」
そこから滔々と繰り広げられる跡部のお説教――曰く、授業をサボりすぎたら部活停止だの、中でも音楽の授業だけはサボるどころか寝たら終わりと思えだの、脅しめいた言葉を聞き流しながら、俺の目はある一点で止まった。
「…あとべ、なぁ、この子の名前って何て読むんだろ」
「あぁ!?テメェ、聞いてなかっただろ…アーン!?…守河 茉奈莉 じゃねぇのか?」
守河 茉奈莉。その名前を繰り返し読んでみる。
「あの子の名前だっっっっ!!!!」
「…は?いきなりどうした」
「あとべ!俺!見つけたんだ!すっげーすっげー、見たことも無いくらい可愛い子だったんだ!!」
壇上から一通り見たが、そんな奴いたか?なんて、跡部が首を捻る。目が肥えた跡部には、あの子は普通に見えるのだろうか?ならそれは、それでいい。
「だって、跡部が守河に惚れちまったら困るしー」
「あぁ?そんな事ある訳ねぇだろ」
「わかんねーって、本当にほんとーの美人だったんだからなっ!!」
車窓から何気なく空を見上げてみる。不思議なもので、先程までよりずっと高く、美しく見えた。